介護職で退職代行を使うのはアリ?メリット・デメリットを現役介護士が考える

はじめに

「もう仕事を辞めたい……」

そう思っているのに、なかなか退職を切り出せない。

介護職では、そんな人も少なくありません。

特に、

「人手不足だから辞めると言いにくい」

「上司に引き止められている」

「退職を伝えたら怒られそう」

「退職届を出しても受け取ってもらえない」

といった状況になると、精神的な負担はかなり大きくなります。

そんなときに選択肢の一つになるのが退職代行です。

「退職代行なんて無責任じゃないの?」

「介護職なのに、利用者さんを置いて辞めるのはどうなの?」

と考える人もいるでしょう。

しかし、私は介護職だからこそ、退職代行を必要とする人がいると思っています。

今回は、介護現場で働く立場から、退職代行を利用するメリット・デメリットについて考えてみます。


そもそも退職代行とは?

退職代行とは、本人に代わって勤務先へ退職の意思を伝えるサービスです。

通常なら、

「退職したいです」

と本人が上司に伝えます。

しかし、退職代行を利用すると、代行業者などが本人に代わって退職の意思を伝えます。

ただし、退職代行なら何でも同じというわけではありません。

民間業者、労働組合、弁護士など、運営主体によって対応できる範囲が異なります。

特に、退職日の調整や有給休暇、未払い賃金などについて会社と「交渉」してもらいたい場合は、サービスの運営主体と対応範囲を慎重に確認する必要があります。民間業者が法律事務に当たる交渉を行うことには、弁護士法上の問題が生じる可能性があります。


介護職が退職代行を使うメリット

1.上司に直接「辞めます」と言わなくていい

最大のメリットは、これではないでしょうか。

「退職したい」と伝えるだけなのに、ものすごく勇気が必要な職場があります。

特に、

「今辞められたら困る」

「次の人が決まるまで働いて」

などと言われ続けている人にとって、退職の話をすること自体が苦痛になっている場合があります。

退職代行を利用することで、その精神的な負担を減らせます。


2.引き止めに悩まされにくい

介護施設は人手不足のところも多く、退職を申し出ると引き止められることがあります。

「あなたがいないと困る」

「利用者さんはどうするの?」

と言われると、責任感の強い人ほど辞められなくなります。

しかし、職員不足を一人の介護士が背負う必要はありません。

人員確保は施設側が考えるべき問題です。


3.精神的に限界の人でも退職への一歩を踏み出せる

毎朝、仕事に行くことがつらい。

職場のことを考えるだけで苦しくなる。

そんな状態になっているなら、退職手続きを自分一人で進めることさえ負担になることがあります。

退職代行は、そのような人にとって「職場から離れるためのきっかけ」になる場合があります。


4.職場との直接のやり取りを減らせる

退職時には、

「いつ辞めるのか」

「有給はどうするのか」

「制服や備品はどう返すのか」

など、さまざまなやり取りが発生する可能性があります。

直接話すことが難しい人にとって、窓口を一本化できることはメリットです。


介護職が退職代行を使うデメリット

1.費用がかかる

当然ですが、退職代行には料金がかかります。

本来自分でできる退職手続きを、費用を払って依頼することになります。

「自分で退職を伝えれば費用はかからない」

という点はデメリットです。

ただし、その費用を「精神的な負担を減らすための必要経費」と考える人もいるでしょう。


2.職場の人からどう思われるか気になる

「退職代行を使って逃げたと思われないかな……」

と心配する人もいるでしょう。

確かに、職場によっては良く思われない可能性があります。

しかし、すでに退職を決意しているのであれば、退職後の職場の評価を気にしすぎる必要はありません。

あなたの人生を決めるのは、職場の人ではありません。


3.退職後の手続きまで全部任せられるとは限らない

退職代行を利用したからといって、すべての手続きが自動的に終わるわけではありません。

離職票、健康保険、年金、雇用保険など、退職後に自分で確認・手続きが必要になるものもあります。

「退職代行に頼めば全部終わる」と考えず、何を代行してくれるのかを事前に確認しましょう。


4.業者選びを間違えるとトラブルになる可能性がある

ここは非常に重要です。

退職代行を利用するなら、料金だけで決めないようにしましょう。

特に、

  • 何を代行してくれるのか
  • 会社との交渉が可能なのか
  • 運営主体は民間企業なのか、労働組合なのか、弁護士なのか
  • 追加料金はあるのか
  • 退職できなかった場合の対応はどうなるのか

などを確認することが大切です。

労働組合には、一定の条件のもとで使用者と交渉する権限があります。

一方、弁護士でなければできない法律事務もあります。

「有給を全部消化したい」

「未払い残業代を請求したい」

「退職金について会社と交渉してほしい」

など、単に退職意思を伝えるだけでは済まない問題がある場合は、特に慎重に選びましょう。


「介護職なのに退職代行」は無責任なのか?

ここは、介護職だからこそ考えてほしい部分です。

「利用者さんがかわいそう」

「職員が足りなくなる」

「自分が辞めたら他の職員に迷惑がかかる」

そう考えてしまう人は多いでしょう。

でも、介護士一人が自分を犠牲にして職場を支える必要はありません。

施設の人員配置や採用は、経営者や管理者が考えるべき問題です。

もちろん、余裕があるなら、きちんと退職の意思を伝え、引き継ぎをして退職するのが理想でしょう。

しかし、それができないほど追い詰められている人まで、

「介護職なんだから最後まで責任を持て」

と言う必要はないと思います。


退職代行を使う前に一度考えてほしいこと

退職代行を使うこと自体を否定する必要はありません。

ただし、利用する前に、

「本当に退職しなければならないのか?」

ではなく、

「今の職場を辞めたいのか、それとも介護職そのものを辞めたいのか?」

を一度考えてみてください。

もし原因が、

「人間関係」

「夜勤がきつい」

「給料が安い」

「日中の人員不足がつらい」

「上司と合わない」

ということであれば、施設を変えるだけで解決する可能性があります。

介護施設は一つではありません。

特養から有料老人ホームへ。

施設介護から訪問介護へ。

正社員から派遣へ。

働き方を変える方法もあります。


退職代行を使ってもいいと思うケース

個人的には、次のような状況なら退職代行を利用することも選択肢だと思います。

  • 退職を何度伝えても認めてもらえない
  • 強い引き止めが続いている
  • 上司と直接話すことが精神的に難しい
  • ハラスメントなどで職場に行くこと自体がつらい
  • 退職を伝えると怒鳴られるなどの恐怖がある
  • 体調や精神状態から、自分で退職手続きを進めることが難しい

一般的な無期労働契約では、厚生労働省も民法627条に基づき、退職の申出から原則14日で退職となるルールを説明しています。ただし、就業規則や契約内容など個別事情もあるため、具体的なケースでは専門家への確認が安心です。


退職代行を使う前に確認したいこと

退職代行を利用するなら、最低限、

①運営主体

②料金

③追加料金の有無

④退職日の調整ができるのか

⑤有給休暇について対応できるのか

⑥未払い賃金などの問題に対応できるのか

⑦会社から本人へ連絡が来た場合の対応

を確認しましょう。

特に「交渉」が必要なケースでは、民間業者・労働組合・弁護士の違いを理解しておくことが重要です。


まとめ|退職代行は「逃げ」ではなく選択肢の一つ

介護職で退職代行を使うことについて、私は「アリ」だと思います。

もちろん、すべての人におすすめするわけではありません。

自分で退職を伝えられるのであれば、それが一番シンプルです。

しかし、

「もう自分では退職を伝えられない」

というところまで追い詰められている人もいます。

そんな人に、

「介護職なんだから我慢しろ」

と言う必要はないでしょう。

介護職は人を支える仕事です。

でも、介護士自身が壊れてしまうまで働く必要はありません。

退職代行を使う。

転職する。

施設を変える。

派遣という働き方に変える。

訪問介護に移る。

さまざまな選択肢があります。

大切なのは、「辞めるか、我慢するか」の二択にしないことです。

そして、退職代行を利用するなら、運営主体や対応範囲をしっかり確認し、自分の状況に合ったサービスを選びましょう。

介護の仕事を辞めることと、介護職としての人生を終わらせることは同じではありません。

今の職場から離れることで、もう一度「介護の仕事を続けてみよう」と思えることだってあります。

それも立派な「脱出」です。

介護リアル脱出ノートでは、これからも介護職が「もう限界」と感じたときに、辞める・転職する・働き方を変えるためのさまざまな選択肢を発信していきます。

逃げてもいい。
介護士自身の人生も、利用者さんと同じくらい大切です。

※退職の具体的な手続きや有給・未払い賃金などの法的問題は、雇用契約や個別事情によって異なります。必要に応じて弁護士、労働組合、労働局などの専門窓口に相談してください。厚生労働省には、退職などを含む個別労働紛争について相談・助言・あっせんを行う制度もあります。

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