「今の職場を辞めたい。」
そう思って転職を決意したものの、
「転職したけど、前の職場のほうが良かった……」
「給料は上がったけど、人間関係が最悪だった」
「求人票では働きやすそうだったのに、実際は全然違った」
そんな後悔をしてしまう介護職は少なくありません。
介護施設は、特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、グループホーム、介護老人保健施設など、さまざまな種類があります。
そして同じ介護職でも、施設によって仕事内容だけでなく、職員配置、人間関係、教育体制、夜勤、残業、休みの取りやすさ、介護に対する考え方まで大きく違います。
私は介護保険制度が始まる前から介護の現場で働いてきました。
長く介護の仕事を続ける中で感じるのは、
「介護の仕事が嫌になった」のではなく、「働いている職場が合っていなかった」だけの人が非常に多い
ということです。
だからこそ、介護職の転職では「どこでもいいから採用されたところ」ではなく、自分に合った施設を見極めることが重要です。
この記事では、長年介護現場を見てきた経験から、介護職が転職先を選ぶときに確認してほしいポイントを7つに絞って解説します。
介護職の転職で失敗する人に共通する3つの特徴
まず、転職先選びで失敗しやすい人には共通点があります。
1.給料だけで決めてしまう
「今より月給が3万円高い!」
これは確かに魅力的です。
しかし、夜勤回数が多かったり、処遇改善加算の配分方法が違ったり、固定残業代が含まれていたりすると、単純に「給料が高い」とは判断できません。
基本給はいくらなのか。
夜勤手当はいくらなのか。
資格手当はいくらなのか。
処遇改善加算はどのように支給されるのか。
こうした内訳まで確認する必要があります。
求人票を見るときは、給与の「総額」だけで判断しないようにしましょう。
転職先を選ぶときは、まず求人票に書かれている給与や勤務条件を正しく読み取ることが大切です。求人票の「ここ」を確認しないと、入職後に「思っていた条件と違った」と後悔することがあります。
介護職の求人票でチェックすべきポイントについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 「介護職の転職で失敗しない『求人票』の見方|チェックすべき10項目」
2.「家から近い」という理由だけで決める
通勤時間はもちろん重要です。
しかし、徒歩10分の職場でも、人間関係が悪く、毎日ストレスを抱えるなら長く続けることは難しくなります。
反対に、多少通勤時間がかかっても、
- 職員同士の関係が良い
- 休みが取りやすい
- 教育体制がある
- 残業が少ない
- 介護の考え方が自分と合っている
という職場なら、長く働ける可能性があります。
「近い=働きやすい」ではありません。
3.採用が早いから決めてしまう
面接したその日に、
「ぜひ来てください」
「明日からでも働けますよ」
と言われると、必要とされているようで嬉しくなるかもしれません。
もちろん、採用が早いこと自体が悪いわけではありません。
ただし、なぜ人を急いで採用しているのかは確認しておきたいところです。
慢性的な人手不足なのか。
退職者が続いているのか。
新規事業による増員なのか。
理由によって意味はまったく違います。
「なぜ今回募集しているのですか?」
と聞いてみるのも一つの方法です。
介護職の転職で失敗しない施設選び7つのポイント
ここからは、実際に転職先を選ぶときに確認してほしいポイントです。
① 施設見学をして「職員の表情」を見る
介護職の転職では、施設見学をできるだけ行ってください。
求人票だけでは分からないことが、施設に入った瞬間に見えてくることがあります。
私が見学するなら、次のようなところを確認します。
- 職員から自然な挨拶があるか
- 職員の表情が疲れ切っていないか
- 利用者さんへの声かけが丁寧か
- 職員同士が普通に会話しているか
- フロアが整理整頓されているか
- 利用者さんが放置されていないか
- 職員が忙しそうに走り回っていないか
特に注目してほしいのが、職員の表情と利用者さんへの接し方です。
もちろん、見学した短い時間だけですべてを判断することはできません。
しかし、「なんとなく嫌な雰囲気がする」という感覚は、意外と無視できません。
求人票だけでは分からない「職場の雰囲気」を確認するためにも、施設見学は非常に重要です。
介護施設を見学するときに、どこをチェックすればいいのか、15項目に分けて詳しくまとめました。
→ 「介護施設の見学で見るべきポイント15選|現役介護士が教えるチェック方法」
② 人間関係は「職員の勤続年数」だけで判断しない
介護職が転職を考える理由として、人間関係は非常に大きな問題です。
だからこそ、
「人間関係は良いですか?」
と直接聞くだけではなく、別の質問をしてみましょう。
例えば、
「職員の平均勤続年数はどれくらいですか?」
「新人さんはどのくらいの期間で独り立ちしますか?」
「退職される方はどのような理由が多いですか?」
などです。
ただし、勤続年数が長ければ必ず良い職場とは限りません。
長く働いている職員同士の結束が強く、新人が入りにくいケースもあります。
重要なのは、
「長く働いている人がいるか」だけではなく、「新しく入った人が馴染める環境なのか」
ということです。
介護職にとって、人間関係は給料や仕事内容と同じくらい重要な問題です。
もし今の職場の人間関係に悩んでいるなら、転職を決める前にこちらの記事も読んでみてください。
→ 「介護職の人間関係が最悪…職場で嫌われないための7つのコツ」
③ 教育体制・新人へのフォローを確認する
経験者だからといって、転職後すぐに一人前として扱ってよいわけではありません。
施設が変われば、
- 利用者さん
- 介助方法
- 記録方法
- ケアのルール
- 夜勤体制
- 緊急時の対応
- 申し送り方法
など、覚えることはたくさんあります。
そこで確認したいのが教育体制です。
「入職後はどのような研修がありますか?」
「夜勤に入るまでの期間はどのくらいですか?」
「新人教育を担当する職員は決まっていますか?」
など、具体的に聞いてみましょう。
「経験者だからすぐ夜勤ね」
という職場よりも、本人の経験や能力を見ながら段階的に仕事を任せてもらえる職場の方が安心できます。
介護職として長く働くのであれば、資格取得やキャリアアップについて考えておくことも大切です。
介護福祉士を取得するメリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
④ 夜勤体制は必ず確認する
介護職にとって、夜勤は働きやすさを大きく左右します。
同じ「夜勤あり」の施設でも、実際の負担はまったく違います。
確認したいのは、
- 夜勤は何人体制なのか
- 何人の利用者さんを担当するのか
- 休憩は実際に取れているのか
- 夜間に看護師へ連絡できるのか
- オンコール体制はあるのか
- 急変時の対応はどうなっているのか
- 夜勤明けの翌日に勤務が入ることがあるのか
といった部分です。
特に、
「夜勤は2人体制です」
という説明だけでは不十分です。
「利用者さんは何人ですか?」
まで確認しましょう。
同じ2人体制でも、利用者数や介護度によって忙しさは大きく変わるからです。
夜勤は介護職の身体的・精神的な負担にも大きく関係します。特に夜勤明けの過ごし方を間違えると、疲労がさらに蓄積してしまいます。
夜勤明けの疲れをできるだけ残さないための過ごし方については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
⑤ 残業・休憩・有給休暇の実態を確認する
求人票に、
「残業ほぼなし」
「有給休暇取得率○%」
と書いてあっても、それだけで安心するのは早いです。
面接では、
「月平均の残業時間はどのくらいですか?」
「定時で帰れる職員は多いですか?」
「休憩時間はきちんと取れていますか?」
「有給休暇は希望日に取得できますか?」
と具体的に聞いてみましょう。
介護現場では、人手不足によって休憩が十分に取れなかったり、定時後に記録や業務が残ったりするケースもあります。
「休憩時間60分」と書かれていることと、「実際に60分休めること」は別問題です。
ここは転職前に確認しておきたい重要ポイントです。
⑥ 利用者さんへの接し方を見る
私は、施設見学で特に見てほしいのがここです。
職員が利用者さんにどのような言葉をかけているでしょうか。
例えば、
「○○さん、お待たせしました」
「ゆっくりで大丈夫ですよ」
「次は○○しましょうか」
など、利用者さんの気持ちを考えた声かけができているでしょうか。
逆に、
- 命令口調
- 急かす
- 無視する
- 利用者さんを子ども扱いする
- 職員同士が利用者さんの前で不満を言う
といった場面が多い場合は注意した方がよいでしょう。
もちろん、一場面だけを見て施設全体を判断することはできません。
しかし、その施設が利用者さんをどのように考えているのかを知るヒントにはなります。
⑦ 最後は「自分が感じた違和感」を大切にする
転職先を選ぶとき、条件を比較することは大切です。
しかし、数字だけでは判断できないものがあります。
それが「違和感」です。
例えば、
「何となく職員の雰囲気が暗い」
「面接官が職員の悪口を言っていた」
「質問すると嫌そうな顔をされた」
「求人票と説明が違う」
「見学中、利用者さんへの対応が気になった」
こうした違和感があるなら、一度立ち止まってください。
もちろん、緊張しているだけという可能性もあります。
だからこそ、
「違和感があった=ブラック施設」ではなく、「なぜ違和感を持ったのかを確認する」
ことが大切です。
反対に、
「職員が自然に挨拶してくれた」
「利用者さんが穏やかに過ごしていた」
「面接で質問しやすかった」
「自分の経験をきちんと聞いてくれた」
という感覚があるなら、そこも大切な判断材料になります。
転職エージェントは「情報収集」として利用する
介護職の転職では、転職エージェントを利用する方法もあります。
メリットは、求人票だけでは分からない情報を担当者から聞ける場合があることです。
例えば、
- 職場の雰囲気
- 過去の採用状況
- 教育体制
- 夜勤体制
- 給与条件
- 施設の特徴
などです。
ただし、紹介された施設だから安心とは限りません。
転職エージェントはあくまで情報収集の一つの手段として利用し、最終的には自分で確認することが大切です。
可能であれば、
求人を見る → エージェントから情報を得る → 施設見学をする → 面接で質問する
という流れで比較すると、転職後のミスマッチを減らしやすくなります。
転職前に確認したい「5つの質問」
「面接で何を聞けばいいのか分からない」という人は、最低限この5つを質問してみてください。
①「今回の求人は、なぜ募集しているのですか?」
退職者の補充なのか、増員なのかを確認します。
②「入職後の教育はどのようになっていますか?」
新人へのフォロー体制を確認します。
③「夜勤は何人体制で、利用者さんは何名ですか?」
夜勤の負担をイメージするために重要です。
④「残業や休憩の実態はどのくらいですか?」
求人票だけでは分からない部分を確認します。
⑤「有給休暇は希望日に取得できますか?」
制度があるだけでなく、実際に利用できる環境なのかを確認します。
「転職してから後悔する人」と「転職して良かった人」の違い
長く介護現場を見てきて感じるのは、転職で成功する人は必ずしも「条件の良い職場」を選んでいるわけではないということです。
むしろ、
自分が何を大切にして働きたいのかを理解している人
の方が、転職後のミスマッチが少ないように感じます。
例えば、
「給料を上げたい」
「夜勤を減らしたい」
「人間関係の良い職場で働きたい」
「残業を減らしたい」
「認知症ケアをもっと学びたい」
「家庭と仕事を両立したい」
など、人によって転職の目的は違います。
だから、
「評判の良い施設=自分に合う施設」
とは限りません。
あなたにとって大切な条件を最初に決めておくことが重要です。
転職は「逃げ」ではない
「また辞めたら、逃げていると思われるかもしれない。」
そう悩む介護職もいるでしょう。
しかし、私はそうは思いません。
人間関係が合わない。
慢性的な人手不足で毎日疲れている。
休憩が取れない。
残業が当たり前になっている。
夜勤の負担が大きすぎる。
自分の考える介護と施設の方針が合わない。
そんな環境で無理を続けることだけが正解ではありません。
介護施設は一つではありません。
同じ介護職でも、働く場所が変わるだけで仕事内容や人間関係、働き方が大きく変わることがあります。
だからこそ、
「介護職を辞めたい」のか、それとも「今の職場を辞めたい」のか。
「介護職を辞めたい」と思ったとき、すぐに退職を決める必要はありません。まずは、自分が本当に介護そのものを辞めたいのか、それとも今の職場から離れたいのかを考えてみましょう。
「もう限界かもしれない」と感じている方は、こちらの記事も読んでみてください。
→ 「介護職を辞めたい…もう限界と思ったあなたへ|辞める前に考えてほしい7つのこと」
ここを一度考えてみてください。
もし介護そのものが嫌になったわけではないのであれば、転職によってもう一度「介護の仕事を続けて良かった」と思える可能性があります。
まとめ|介護職の転職は「条件」より「相性」を見る
介護職の転職で失敗しないためには、給与や通勤時間だけでなく、実際の職場環境を確認することが重要です。
そもそも「特養・有料・グループホーム・老健では何が違うの?」と思っている方もいるでしょう。
施設ごとの仕事内容や特徴、働く前に知っておきたい違いについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
→ 「特養・有料・グループホーム・老健の違い|介護職として働くならどこがいい?」
今回のポイントをまとめます。
- 求人票の給与だけで判断しない
- できるだけ施設見学をする
- 職員の表情や人間関係を見る
- 新人への教育体制を確認する
- 夜勤の人数と利用者数を確認する
- 残業や休憩の実態を聞く
- 有給休暇の取りやすさを確認する
- 利用者さんへの接し方を見る
- 面接では「なぜ募集しているのか」を聞く
- 自分が感じた違和感を無視しない
そして何より大切なのは、
「自分は転職して何を変えたいのか」
を明確にすることです。
給料なのか。
人間関係なのか。
夜勤なのか。
残業なのか。
働き方なのか。
それとも、もっと自分らしい介護ができる環境を探しているのか。
ここが明確になれば、求人を見る目も変わってきます。
介護の仕事そのものが嫌になったわけではないのなら、今の職場だけが介護のすべてではありません。
私自身、介護保険制度が始まる前から現場を経験してきましたが、介護の世界には本当にさまざまな職場があります。
「もう介護を辞めるしかない」
と決める前に、
「働く場所を変える」という選択肢
も考えてみてください。
施設によって仕事内容や人員体制、夜勤、利用者さんの介護度などは大きく異なります。
特別養護老人ホームと有料老人ホームでは、働き方にどのような違いがあるのでしょうか?
→ 「働くなら特別養護老人ホーム?有料老人ホーム?|それぞれのメリット・デメリット」
介護リアル脱出ノートでは、これからも現場経験をもとに、介護職が「知らずに損をしない」「転職して後悔しない」ための情報を発信していきます。
あなたがいつか、
「あのとき転職して良かった」
と思える職場に出会えることを願っています。

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